保守主義の哲学シリーズⅡ-7‐‐‐「米国保守主義の父」アレクサンダー・ハミルトンの哲学と米国憲法


「米国保守主義の父」アレクサンダー・ハミルトンの哲学と米国憲法(其の7)

 ここで、話を『ザ・フェデラリスト』の内容に戻す。

 人民により制定され政府によっては改正できない憲法と、政府によって制定されしかも政府によって改正されうる法律とのあいだにある重要な違いは、アメリカでは十分に理解されているけれども、他のいかなる国においても、ほとんど理解されていないようだし、遵守されていないようである。

 立法の最高権力が存するところではどこでも、政体を変更するのに必要な権力も存すると考えられてきた

 イギリスにおいてすら、その政治的および市民的自由の諸原理についてもっとも議論され、その国制上の諸権利についてもっともわれわれの耳に入ってくるのに、議会の権限は、通常の立法対象だけではなく国制に関しても優越しており制限されえないと主張されている

 そのため、イギリス議会は、幾度となく、立法行為によって、政体のもっとも基本的な条項のいくつかを実際に変更している。

 議会は、とくに、何回かにわたって、選挙期間=下院の任期を変更してきており、最近では、三年ごとの選挙に代えて七年ごとの選挙を導入しただけでなく、同じ法律によって、その変更を行った議員たち自身、人民によって選ばれた任期よりも四年長く席を占め続けている。(=、英国にも清教徒革命以降に「国会主権」という概念が混入して“法の支配”の衰退がうかがえる記述である。特に上院「貴族院」よりも、国民の選挙で選ばれた下院「庶民院」の権力が強くなりすぎている

 ・・・政府に優越する憲法が、存在しないか保有されていないところでは、合衆国に確立しているのと同じような憲法上の保障は試みられるべくもなかった。

 したがって、他の保障策が追求されることになった。・・・それゆえ、権限の抑制のない政府がなしくずしに行う改変に対してなんらかの障壁を設けるために、専制への道は1年ごとの選挙(=任期1年)という固定した地点からどれくらい離れたかによって計測されるという見解が、称賛に値する熱意をもって繰り返し説かれてきたのである。

  ・・・憲法において変更できないように固定された二年ごとの選挙(=下院の任期二年)のもとでアメリカ人民がもっている自由は・・・安全ではないとだれが主張するのだろうか」

第五十三篇 下院議員の任期より

 「上院の効用を説く理由の五番目は、(アメリカには)国家の名声について当然持つべき感覚がないことである。

 政府に選り抜きの安定した構成員がいなければ、既に論じた理由から生じる不見識で気まぐれな政策によって、諸外国の尊敬が失われるだけではなく、全国議会は、国際世論の尊敬と信頼とを得られないし、それらに値するためにおそらく必要である国際世論への敏感な理解力ももてないであろう

 ・・・元老院をもたずに長続きした共和政はないと歴史がわれわれに教えていることを思い起こすならば、これまでの考察のすべてにかなりの重みが付け加えられる。

 スパルタローマ、およびカルタゴは、実際に、その特徴が適用されうる数少ない国家である。スパルタとローマには、それぞれ、終身の元老院があった

 カルタゴの元老院の構成についてはあまり知られていない。状況証拠からすれば、それは前二者と、この点においては、異なってはいなかったと考えられる。

 少なくとも元老院が、人民が浮動するのを防ぐ碇となるような何らかの性質をもっていたこと、そして、元老院から選ばれた少人数の会議が終身で任命されただけではなく、欠員が生じたときにはみずから補充したことは確かである。

 これらの事例は、・・・古典古代のほかの共和政が変転きわまりない存在であったのと比べると安定と自由を調和させるような制度が必要であることを実にわかりやすく証明している

 ・・・憲法案にたいする激烈な反対派は、・・・人民によって直接任命されておらず任期が6年である上院は、政府においてしだいに危険なまでの優位を勝ち取っていき、ついには、政体を専制的な貴族政に変えるにちがいないと繰り返すことで恐らく満足するであろう。

  ・・・だがもし、この問題についての警戒心を静めうるものがあるとすれば、それは、イギリスの事例であるにちがいない。

 そこでは、元老院(貴族院)は6年ごとに選出されたり、特定の一族や財産に限定されて選出されたりするのではなく、裕福な貴族からなる世襲の議院である

 庶民院は、2年ごとに人民全体により選出されるのではなく、7年ごとに選出され、その大部分は、人民のほんの一部によって選ばれる

 将来いつの日か、合衆国において実証されるであろう、貴族政的な権力簒奪と専制とは、まぎれもなく、ここに、完璧な姿で見えるはずである。

 しかしながら、連邦憲法反対派には残念なことに、イギリス史がわれわれに教えるところによれば、この世襲の議院は、庶民院の絶えざる権力侵害に対してみずからを守ることすらできないでおり、実際、国王の支持を失ったとたん、たちまちのうちに、庶民院の重みにつぶされてしまった

 この問題について古典古代がわれわれに伝えているかぎりでは、そこでの事例はすでに用いた推論を支持している。

 スパルタでは、人民によって毎年選出される監督役が、終身の元老院を凌ぎ、たえずその権限を強化してゆき、ついには、すべての権力をみずからの手中に収めた

 人民によって選ばれたローマの護民官は、よく知られているように、ほとんどあらゆる抗争において、終身の元老院を圧倒し、最後はそれに対してほぼ完全に勝利した

 この事実は、護民官の数が10名に増やされたあとですら、護民官のすべての行為には全員一致が必要とされたことを考え合わせると、よりいっそう注目に値する

 これは、自由な政府のなかで人民を身近においている部門は抵抗しがたい力をもっていることを証明している

 これらの事例にカルタゴを付け加えることができる。ポリュビオスの証言によれば、カルタゴの元老院は、すべての権力をその渦のなかに引き込んだのではなく、第2次ポエニ戦争が始まったときには、元来もっていたほとんどすべての権限を失ってしまっていた」

第六十三篇 上院議員の任期より


ハミルトン保守主義は、次回Ⅱ-8へ続く


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